取材時期:2018年6月
未来な明日に向かって、自分らしい生き方や働き方を創造する看護師や個人・団体を紹介するコーナー【ミライナース】。こちらの記事は、前身となったウェブメディア【ミライナース】より記事を移転しています。
心や体で体験すると認識が変わる!!
超高齢化が進む日本で、増え続けているのが「認知症」
医療従事者でもコミュニケーションが難しい認知症ですが・・・今回はそんな認知症をVR(バーチャルリアリティ)で体験できるということで行ってきました!!
Contents
体験人数16,000人以上!VR認知症プロジェクト
(案内してくれたのは、VR担当で介護福祉士でもある川上 陽那さん)
今回VR体験でお邪魔したのは株式会社シルバーウッド。
サービス付き高齢者住宅「銀木犀」などを運営している会社です。
認知症VRプロジェクトとは?
認知症になると想いを表に出しづらくなり、代わりに起こす行動が“周囲には理解できないもの“と映ってしまうことが多くあります。
表面的な行動は「徘徊」「帰宅願望」「入浴拒否」「暴力・暴言」などの様々な言葉で表され、”認知症だから起こすもの”と思われがちです。しかし”認知症だから”ではなく、混乱する環境においては誰もが通常と違う行動を起こすものと理解し、始まったのがVR認知症プロジェクトです。
(引用:シルバーウッド VR体験プロジェクトHPより)
実際にやってみよう!
まるで実体験!頭だけではなく心や体で感じる認知症の世界
①私をどうするのですか?
いままで接する時に「どうしてそんなことに?」と腑に落ちなかった認知症のある方への想像力を養います。また認知症は単なる記憶障害だけでは無いことを体験することができます。
②ここはどこですか?
「どうしよう、思い出せない・・・」認知症があっても無くても誰もが一度は経験がありそうな「困ってしまうエピソード」を体験。認知症への偏見や差別を無くしそこから見える「認知症」の本当の問題とは何か?を体験するコンテンツです。
③レビー小体病 幻視編
「幻視」が特徴的な症状である「レビー小体病認知症」の当事者である樋口直美さん監修。樋口さんの”実際に見ている世界”を体験します。
VR機器を装着・・・
実際の自分の動きと連動して、視界が動き、見える景色が変化します。
(体験中・・・)
(えっ、誰・・・?えっ、何ここ?!何これ?!)
今回の体験のひとつ『①私をどうするのですか?』では、「足を下ろしましょう」と声をかけられてその人のほうを見ると・・・“自分”がビルの屋上にいるという状況を体験しました。
実際には介護者が”自分”を「車から降ろそう」としているのですが、”自分”にとって見えているその場所はビルの屋上。VRとはいえ、「足を下ろしたらビルから転落して死んでしまう!」という恐怖を味わいました。
体験してみたすごくシンプルな感想・・・
めっちゃ怖い!!!!!
感じることで広がる視野!認知症を「知ろうとする」ことから始めよう
■中核症状
・記憶障害(新しいことが覚えられない、思い出せない)
・見当識障害(場所、時間、人などが分からなくなる)
・失語、失行(話そうとしたことを忘れる、やろうとしたことを忘れる)
・遂行機能障害(炊事・洗濯など複数の動作を複合した作業が途中でできなくなる、など)
■周辺症状(BPSD)
~中核症状に付随して引き起こされる二次的な症状~
・不安・焦燥
・不眠
・徘徊
・幻覚、妄想
・うつ症状
・異食
・興奮、暴力
上記はいわゆる「アルツハイマー型認知症」の代表的な症状ですが、認知症にも様々なタイプがあり、特徴的な症状にはそれぞれ違いがあります。
わたし自身、看護師のひとりとしてたくさんの認知症の方と関わってきました。
認知症の方と関わっていると「覚えられない」「思い出せない」ということがたくさんあります。
でも、それ以前に「今、見えている世界が他の人と違う」こともたくさんあります。
だけどそれを情報や知識としては知っていても、実際に相手が「どんな世界を見ているのか」「どんな言葉が聞こえているのか」は、普段は想像することはできても体験することができません。
看護師や医療従事者は「認知症があるのは当たり前」という認識が身に付き、そういった方と関わることに良くも悪くも「慣れ」が生じてしまいがち。
そんな「分かるけど分からない」「理解したい気持ちはあるけど、実際のところは分からない」部分をVRによって五感を使って体験することで、すごく考え方の視野が広がりました!
“認知症になっても大丈夫” “認知症になってからも楽しく過ごしていける” 私たちはこのプロジェクトを通じて認知症に対するポジティブな感情を発信していくことを目標としています。
このプログラムでは「認知症を学ぶ」のではなく「認知症を体験する」ことで認知症のある方への理解を深めることを目指しています。
このVR体験プロジェクトが目的・目標にしているのは、認知症への社会の理解を深め、認知症に対してポジティブな感情を持てる人を増やすこと。
シルバーウッドが運営するサービス付き高齢者住宅「銀木犀」では、高齢の入居者と地域の子供や若者が交流できる仕組みづくりを実現しています。
これからの超高齢化社会に必要なのは、子供も大人も高齢者もお互いに自然に支え合い助け合えるようなコミュニティ・ネットワークをつくっていくこと。
「認知症だから・・・」ではなく「認知症があっても暮らしていける」「病気や障害があってもお互いに足りない部分を補い合う」という認識を日本中の人が持てるようになることが、社会全体で必要になってきています。
もちろん、少子高齢化や認知症の問題は、簡単に解決できるようなことではありません。
けれど、「知ろうとすること」「知って理解を深めていくこと」は誰にでもできる。
そのためのひとつの手段として、この『VR認知症プロジェクト』をたくさんの人に体験してもらいたい・・・そうわたしは思いました。
わたしはVR認知症プロジェクトを応援していきます!
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