ツインレイ

ツインレイ*彼と私の物語⑦

そのカフェには、靴を脱いでくつろげる小上がりの席があり、クッションフロアでゆったりと足を伸ばして座ることができる。

 

一番奥の隅っこのソファ席に通された私たち。

癖で四隅の角に座ると、広いクッションフロアだというのに彼は私と思いきり並んで座ってきた。

 

(肩!当たる!!これだけ広いのになんでわざわざ至近距離に並んで座るの、この人は・・・)

 

「一人暮らし?」

「シェアハウスに住んでます」

「えー!絶対恋が生まれるやつやろそれ!」

「ないない(笑)そんな雰囲気じゃないです、うちのとこは」

「いやー俺エロい想像しかできないもん(笑)なーなー、あそこの席のカップルめっちゃイチャついとらん?」

「あ”-もー欲求不満ですか?!中学生みたいな発言やめてください」

 

表情は無表情に近いが、どうにも落ち着きがない彼。

その言葉・動作で、そわそわ・ムズムズしているその心情が伝わってくる。

 

(思春期の中学生みたいだなぁ・・・)

(チャラいの?それともめちゃくちゃ純粋なの?)

 

「あ、そうだこれ。もしよかったら、娘さんにどうぞ」

私は彼に、午前中にフリーマーケットで買ったヘアゴムをプレゼントした。

 

「え・・・!何コレ・・・!」

「さっきフリマで見かけて、可愛かったので~」

「ありがとう・・・。俺、女の子の好みとか全然わからんから嬉しい。きっと喜ぶと思う」

 

(パートナーとの死別って、どれくらい辛いんだろう。たった2ヵ月や3ヵ月で、こんなに普通に生活できるものなんだろうか)

隣で無邪気に少年のように過ごす彼の心の内は、伺い知ることができない。

 

「な~来週暇ある?暇やろ?昨日ワークショップできなかったから、来週リベンジでもう一回東京来る!!!」

「へ???何言ってるの、また来るなんて大変でしょ」

「いやいや、やる!!!」

と、強引に私の次週のスケジュールを埋める彼。

 

気付けば、完全に彼のペースに巻き込まれている。

 

「なー!このソファめっちゃ広いから横になれるやん!俺寝ていい?」

と、我が家のようにくつろぎ始める彼。

「マイさんも寝てみ~気持ちええで~」

(うん。魂胆が見え見えだ・・・)と思いつつも横になると、案の定彼に頭をポンポンと触られる。

 

「髪サラッサラやなぁ・・・」

「こら、やめなさい。高いよ?(笑)」

カフェで過ごした時間は、1時間にも満たなかったと思う。待ち合わせしてからもせいぜい1時間半。

 

「次!!!やっべーーー!!!」

私に時間を確認され、促されて、慌てて先に店を出ていく彼。

慌てん坊でおっちょこちょいな、少年のような人。

 

(いやいやいや・・・こんなの、反則でしょ・・・)

 

彼は、妻と死別して3ヵ月にも満たない、小さな子供が二人もいるシングルファザーだ。

 

現実的にパートナーはいない、けれど、心の中に深く愛する人がいる。

愛する人を亡くして、まだ間もない。

家族がいる、子供がいる、周りの目がある。

 

(遊びならともかく、これ本気だったら、どうするの・・・)

(こんな人を、”今”好きになってしまったら・・・)

(しかも遠距離とか・・・)

 

当時私には、別居中の夫がいた。

すでに離婚するつもりではいたが、家族として夫を愛する気持ちは強く、離婚という最後の決断ができずにいた。

シェアハウスに住んでいるのは、最終決定をすることから”逃げるための逃げ”だった。

 

そんなタイミングで、こんなに急に、誰かに心を動かされるなんて思ってもみなかった。

 

「離婚したら私、どうなるかな?次の恋愛できる?」

「すぐできるよ!なんか陽気で明るい人が来るよ」

「えぇ~・・・今周りにいるかなそんな人?今まで好きになったことないタイプだな~」

「だよね~マイちゃんが好きなのは真面目系・・・」

2週間前、今と同じ席で親友が出したタロットカードは、次に巡り合う人を示唆していた。

 

(はや・・・まじか・・・)

(っていうか占いって、そんな当たるもん?)

 

私はそれから、彼の計算なのか純粋なのか分からない少年の姿、落ち着きのない行動や言動に、どんどん目が離せなくなっていっていく。